本の紹介

メイ・サートン 「独り居の日記」

表題のとおり、これはアメリカの作家メイ・サートンの日記です。作品として位置づけられていますが、そういう感じはほとんどなく、普通の日記のようにその日にあったこと、誰それが訪ねてきたとか、庭を掃除したとか、そんなことが書かれています。そして深…

 ドナルド・キーン 「私の大事な場所」

キーン氏が訪れた様々な場所と出会った人々についてのエッセイ集である。キーン氏は私が最も好きな人の一人だ。柔らかい物腰と謙虚な人柄、そしてユーモアのある語り口。何よりも私が感動したのは、昨年キーン氏が日本国籍を取って日本への愛を証明してくれ…

「ワールド・カフェをやろう」 香取和昭、大川恒著 (日本経済新聞出版社)

ワールド・カフェを国際交流の場と思っている人は、私だけだろうか。名前から想像して、いろんな国の人が喫茶店に集まって楽しむ、そんなふうに私は理解していたが、つい最近そうでないことがわかって、早速本を買ってみた。すると大違い。これは創造的な場…

 ウェブはグループで進化する

ポール・アダムス著 ウェブはグループで進化するソーシャル・ネットワーク・サービスをビジネスに活かすためのハウ・ツーものです。普段この手の本は全く読まない私ですが、フェイスブックで友人が同著書のページを紹介しており、それに興味があって読んでみ…

ほんとうの親鸞

島田裕巳 著 「ほんとうの親鸞」先日の「葬式は要らない」が面白かったので、続いて「ほんとうの親鸞」。これも実に面白い。親鸞にはしばらく前から興味があって、五木寛之の「親鸞」を手にとったが、上巻だけを読んでお仕舞いにした。親鸞という人間が非常…

島田裕巳 著 「葬式は、要らない」

宗教学者である著者が、葬式が不要である理由を縷々述べている。仏教の本来の教義から説き起こし、日本の仏教がいかにして葬式仏教に堕したか、葬式の費用がどうして高額になるかなどについて詳しく示し、葬式をしない方法に至るまでが詳細に書かれている。…

忘れられた日本人

宮本 常一 著 「忘れられた日本人」これは明治から昭和初期の日本の村の様子やそこに暮らす人の人生を、主に村の人から聞いて書き写した書物だ。一部著者自身の回想も含まれている。数日前に、知人が面白いと紹介していたので、題に惹かれて私も読んでみたが…

お母さんと先生に伝えたい60のこと

たくみ発達クリニック 内匠 敬人/良子著 「お母さんと先生に伝えたい60のこと」発達障害児の力を引き出すために長年発達障害児と関わった経験を基に、様々な助言がわかりやすい言葉で書かれています。例えば、「試行錯誤を繰り返しながら、最良に近づいてい…

日高敏隆 「動物にとって社会とはなにか」

再び動物学というメガネで人の世界を覗いてみる。昆虫や鳥を含め、自然界にあるあらゆる動物はほぼ一定の個体数を維持している。それは天敵に食われたり病気になったりという外的要因や子を産まなくなるという内的要因によって成される。たとえばトノサマバ…

日高敏隆 「動物と人間の世界認識」

途中で休憩するのがもどかしいほどに面白い本でした。私達が見ている木や花は、動物や虫たちにも見えているのでしょうか。いいえ、彼らには驚くほどに違ったものが見えているのです。しかも、私達から見ればごく限られたものしか見えていない。生きていくた…

長沼毅 「私たちは進化できるのか」

自分が小さく見えて、自身がなくなってきたら、この本を読もう。生物学者が書いた本を読むのは初めてではありませんが、これは一風変わっています。辺境生物学者とタイトルが付いているこの著者は南極、北極、深海など文字どおり辺境の生物を研究していて、…

これはまさに 運命という他ない

図書館の古本祭りがあるというので、期待はしなかったが行ってみた。初めて。広い会場にずらりと並んだ数千冊はあろうかという本を端から見る。やっぱり欲しいのはないな、、、と思って進んでいくと、なんと、長いこと探していた本があるではないか!!この…

 福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

感動した。内容にではなく、構成に。この報告書はワーキング・グループと呼ばれる、原子力工学、科学技術思想、科学行政、社会学、政治学などなどを専攻する学者、研究者、弁護士、ジャーナリストを中心とする委員が、事故の対応にあたった政治家、東京電力…

言語の脳科学

酒井 邦嘉 「言語の脳科学」私達はどうやって言葉を獲得してゆくか。このような、あまりにも身に付いている能力について、実は学問的立場は未だ確立していない、ということを知って私は少し驚いた。脳が言葉を獲得するについては二つの理論が主流となってい…

 壊れた脳、生存する知

山田規畝子 「壊れた脳、生存する知」若干34歳までに三回も脳内出血によって脳の障害を受け、徐々に認知機能が失われてゆくさまを、医師である本人が書き綴った文章です。時計が時計であることはわかるけど、5時なのか7時なのかよくわからない、階段を見ても…

 高次脳機能障害

橋本圭司 「高次脳機能障害」前々から脳の機能にはとても興味があって、オリヴァー・サックスの著作などを読みあさっていたが、つい最近、高次脳機能障害というものがあることを知った。この障害自体、認知されてからまだ日が浅い分野らしく、診療科も独立し…

 クリスマス・ローズ

クリスマス・ローズ NHK趣味の園芸 石原記念男我が家ではクリスマス・ローズが数週間前から大きな木の根本で元気に花を咲かせています。この花を買ったのは十年以上前。まだブームがやってくるずっと前だったので、わずか百円か百五十円で手に入れてセンダン…

活動家一丁上がり

湯浅誠 「活動家一丁上がり」社会にモノ言うはじめの一歩活動家とは「より生きやすい「場」を作る人」であるという定義のもと、「活動家一丁上がり」講座というのがある。この講座では日頃おかしいなと思っていることを公の場で言うための手段とその実行方法…

西に疲れた母あれば

廃棄物の広域処理が思うように進んでいません。 私は機会あるごとに、地元でも受け入れて欲しいと発言していますが、それは人道的とか社会正義とかそんな大層なことが理由ではなくて、「西に疲れた母あれば、行ってその稲束を負い」たいという単純な理由です…

ブエノスアイレス食堂

カルロス・バルマセータ著「ブエノスアイレス食堂」少し前から本のタイトルに惹かれて読んでみたいと思っていた。 以前にガルシア・マルケスの「百年の孤独」と「ママグランデの葬儀」を読んで、ラテンアメリカ文学を少し覗いて好きになった。他にもう一人旅…

デルス・ウザーラ

アルセニエフ著 デルス・ウザーラこれはロシアの地理調査隊と彼らが山中で出会ったデルス・ウザーラという人との、いわば交流を描いた話です。黒澤明監督によって映画化もされました。私は映画も見ましたが、原作から受ける感じが忠実に描き出されていてとて…

夜の哀しみ

三浦哲郎「夜の哀しみ」一人の女が、一瞬の性の発露を原因として不運な死に様をする話。と、一言で言ってしまえばそんなものだけれど、描き方には力があり、生活感がにじみ出てくるようだ。知的好奇心というようなものは全く持ち合わせていないひとりの女が…

忍ぶ川

三浦哲郎「忍ぶ川] ここ二週間は「白夜を旅する人々]を一冊目として、一連の三浦作品を読んでいる。「忍ぶ川」は1960年に芥川賞を受賞した作品だ。三浦自身の経験に基づく作品群の中の一つで、著者が配偶者に出会ってから、ともに郷里へ旅立つところが描か…

三浦哲郎「白夜を旅する人々」

抗いがたい運命というものが、確かにあるのかも知れないとこの話を読んで思った。真水に垂らした墨汁が静々と水の隙間をまんべんなく縫って行き渡り、やがて真水は薄墨になる。この小説に描かれている一家が背負ったのはこの墨汁のようなものだった。どうし…

 吉村昭 「破獄」

この本をすでにお読みになった方にとっては意外と思われるかもしれませんが、この本を読んで私は深い愛を感じました。刑務所の職員の受刑者に対する愛。本当の愛情とは何かということもこの本に語られていると思います。これは脱獄を四回も繰り返した、実在…

 吉村昭 「漂流」

これは無人島に流れ着いた船乗りが、12年に渡る年月をそこで暮らして、生国へ帰るまでの物語だ。実際にあった話を基に書かれている。壮絶とはこういうことを言うのだと、この話を読んで思った。ここには人の生が凝縮されているように思う。孤独ということが…

 吉村昭 「冷たい夏、暑い夏」

これは肺がんに侵された著者の弟の闘病生活と周囲の心情を綴った作品です。ある日、弟が肺がんであることを医師から告げられた著者は、弟にそれを告げず、周囲の者にもそれを徹底し、癌の治療をすることなく自然に死を迎えさせることを決心するのです。ひと…

 吉村昭 「青い骨」

先の「破船」に続いて「青い骨」を読んだ。これは著者が作家としての足がかりをつけるべく自費出版した短篇集だ。これを読むと、当初からあの赤裸々な、鋭い文体は確立されていたんだなと思う。轢死した隣人と一夜を過ごす女、兄弟の微妙な感情のずれ、女の…

グスコーブドリの伝記

宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」ひとつ読み終わっても、すぐには次の本を読みたくない本というものがある。物語の筋をじっくり味わい、心のなかで何度も反芻し、登場人物の行動や作者の人生観をあれかこれかと考える。私にとっては、そんな本の一冊がこの…

吉村昭 「破船」

吉村昭 「破船」舞台はある島の、湾に面した戸数17ばかりの小さな漁村である。ちょんまげを結っているとあることから、時代は100年以上前に違いない。海から採れるすこしばかりの海藻や魚介類を食料として暮らしているが、そればかりでは足りるはずもなく、…