ネット・バカ

ネット・バカ
ニコラス・カー
青土社

インターネットがわたしたちの脳にしていること、という副題が付いている。ニコラス・カーの著書は「クラウド化する世界」を以前に読んで、その大変な調査力と公平な観点、広い視野に惹かれた。分析力もすばらしい。

今回の本も読みがいがあるし、興味を引く内容だ。原題はThe shallowsというもので、浅瀬、という意味で、日本語のタイトルが示すような一定の価値を表明していない。内容は原題が表すように、ネットを多用することによって私たちの認識や思考能力が非常に浅いものになるというもので、様々な例を引いて検証している。引かれている例が大変幅広く、かつ深い内容なのでそれ自体おもしろいし、大いに説得力がある。

現在のようにネットが浸透して人の思考回路が変化している状況を歴史の中の一つの点と捉えて、人が文字を持たなかった時代から、活版印刷が考案されて文字が広く行き渡り、新聞というメディアが登場したこと、文学の普及による思考法への影響、タイプライターの登場によって変化した文体、などについても考察している。この歴史的な流れを読むのも興味深い。

インターネットも一つのメディアだが、過去の新聞やラジオ、テレビなどとは一線を画すと著者は述べている。ネットはこれらのメディアをすべて統合したものであり、一つの画面を操作すれば音楽を聴くことも、文字を読むことも、ニュースを聞くこともできるからだ。このようにあまりにも広範な情報がクリック一つで入手できることにより、私たちは一つのことに集中する機会を失っている。この点についても様々な実験を引用して検証されている。

今やネット無しでは仕事もできない状況だが、無意識のうちにわたしたちの脳が受けている影響を知った上で利用した方が賢い。