秋に咲く花

すっかり秋らしくなって、お日様の光は透明感を増し、風がさわやかになってきた。もうすぐ彼岸。と思っていると庭や山裾のあちこちで秋の花がそろって咲き始めた。


シュウカイドウ
この花を見るたびに、なぜか夏目漱石の「こころ」という作品に出てくる、主人公の家の裏庭に咲いていた(思い違いでなければ)シュウカイドウを思い出す。作品のしめやかな雰囲気にとても合っているその名前、きっと静かで控えめな花に違いないと想像した。当時はシュウカイドウがどんな花か知らずにいたが、花を知って、まさにあの小説の雰囲気にぴったりだと思った。実家の庭の隅に咲いていたのを移植して、今は家の木陰で咲いている。漱石は大好きな作家のひとり。やっぱり庭に咲かせる花一つにも心を砕いていることが知れる。


チカラシバ
この草は誰も振り向く人がないと断言できる草。そもそもこれを庭にわざわざ植えている人は私くらいしかいないのではないだろうか。祖母は昔、山羊をこれに繋いでいた。それくらい強く地面に根を張る。
私は一体に穂のようになって咲く花が好きで、しかも野性のが好き。チカラシバはその両方を満たしている。朝早くに庭に出ると、澄んだ空気の中、穂の部分が細かい水滴を帯びてすっくと立って朝日に輝いている。