器の妙


これは母が半世紀以上も前に持ってきた嫁入り道具の一つ、茶碗蒸し用の茶碗だ。蓋がとても持ちやすい。手に馴染んで、持ち上げる時に安定感がある。蓋のある器は他にもたくさん買ったが、こんなにも持ちやすいものは他にない。他のはどれも似たような感じだ。今さらながらどうしてだろうと、よくよく眺めてみると、蓋のつまみになっているところがごくわずかに上に向かって開いている。日常使う道具に施されたこの、隠れた配慮。デザインは特に洗練されているわけでなく、焼き物としても特別な価値はないごく普通の器だ。そういう普通の器にもこんな配慮が昔は施されていたのだ。