ノーベル賞を受賞した鈴木教授のこと

ノーベル賞の発表があって世間がかしましい。日本人として誇らしいことだと思う。それ以上に何の感慨もない受賞ニュースだが、今回は鈴木教授に対して心の底から敬意を抱いた。それは教授がその受賞対象となった研究成果について特許を取得しておられないということを知ったからだ。大変な努力の結果であるその成果を私物化せず、広く世界の利益に供したという姿勢は本当にすばらしい。

すでに20年以上も前のこと、まだ日本では知識に対する特許という概念が広く定着していなかった頃、稲の遺伝子配列を発見した外国の研究者がその知識に対して特許を取得したというニュースが流れたことがあった。その時、日本の研究者はすでに稲の遺伝子配列については知っていたにもかかわらず特許を取得していなかった。これがマスコミに知れて、どうして特許を取得しなかったのかと聞かれ、その研究者は、自然界に存在する物に対して特許を取るなんて考えもつかなかった、という意味のことを発言された。そんなことでは日本は後れを取るばかりだ、というのが当時の論調だったように記憶しているが、さて、どうだろうか。発展途上国に昔から自生していて、地元の人が薬として利用している植物に対して、それに薬効を発見したからと言ってそれに特許を付け、途上国の人にその植物の利用を禁じているという現状を知ると、なんと不条理なことかと思う。技術は、あるいは知識は、個人の利益のためにあるのではない、あるいはあるべきではない。