ご飯の匂い

ご飯も終わって鶏を小屋に入れ、家に入ろうと玄関のドアを開けると、明日のためにしていた煮物の匂いがふうっと匂ってきた。

子供の頃、ちょうど今のように早く日が暮れてしまう頃、「ご飯ができたから、はようかえっておいで。」と呼ぶ母の言葉に引かれて家に帰って、戸口を開けるとふうっとご飯のおかずの匂いがしてきた。

その情景が今、深い懐かしさと共にまざまざと心の中にこみあげてきた。あれが家というものだと、今思う。

田舎の日々の暮らしは単調でさしてドラマチックなことは起こらない。しかしだからといってたいして思い出がないかというと決してそんなことはなく、今日の夕方のように、ごく些細なことが強い感情を伴って思い出されてくる。むしろ単調な日々であったからこそ、家庭で起こる些細なことが大きな位置を占めているのではないだろうか。ふと、そう思った。深い川がゆるゆると流れるように、このあたりの日々は過ぎてゆく