野の道−宮沢賢治随想

野の道−宮沢賢治随想
山尾三省

この「グスコーブドリの伝記」という物語が感動的なのは、農民の困窮と、その困窮に奉仕する科学本来の道具性と、科学者の自己犠牲の精神が見事に物語化されているからであり、科学者としての宮沢賢治の姿勢が、科学そのものにではなく、人間に焦点がしぼられていることが明らかに感じられるからである。−中略− 科学を人間の道具のレベルに保っておかねばならぬとする思想である。−以上本文より引用。

宮沢賢治は私の最も好きな作家の一人だが、それとはまったく別に、好きな本を読んでいるとやはり賢治を引用しているということがままある。中沢新一別役実などがそうだ。そして、最近知った山尾三省も、その中に賢治を引用しまた暮らしも賢治の暮らしの哲学に沿ったものだ。四人に共通するものは血の流れた人間だ。文学や思想学はもとよりあらゆる科学には、その底流に暖かい血が流れていなければ知識だけが暴走することになる。