ブラック・スワン

ブラック・スワン
ナシーム・ニコラス・タレブ

18世紀にクックがオーストラリアを発見するまで、旧世界の人たちはスワンと言えばすべて白いものだと信じて疑わなかった。そして黒いスワンが発見され、それまでスワンは白いものであるという常識が、たった一羽の黒いスワンの発見によって、一夜にして覆された。

このような書き出しで始まるこの本は、過去の経験に基づく常識が以下に危ういものであるかを様々な例を出して説いている。重要なことは過去に基づく推測ではなく、まったく新たなことに備えることだ、と著者は続ける。

著者がデリバティブ・トレーダーであることを知ると、妙にこれが説得力を持つではないか!

現在は高度な計算技術により多種多様な予測が出されている。そのすべては過去の事象を数値化して入力し、その傾向を算出するものだ。

しかし、考えてみよう。この間起こった福島の地震はその巧みでかつ複雑な計算技術が、発生確率ゼロと予測していた場所だ。保険会社はその予測に基づいて保険料をリスク最低限として算出したり、地震対策もそのようにされてきた。このような予測がいかに意味の無いものであったか、今わたしたちは思い知らされている。

ただいまは電力が足りない、足りないとあっちでもこっちでもかしましいが、核分裂を十分に制御できる技術がなく、その廃棄物の処分方法についても確たる方法が確立されていない今、これまでのことを前提とするのではなく、足りない現実に見合った暮らし方、あるいは国のあり方を考えたらどうだろう。あるいは、足りない現実をもとに新たな方策を、あるいは技術を考え出す方向に歩み出したらどうだろう。予測というものに限界がある以上、新たな現実に柔軟に対応する姿勢をこそ、わたしたちは考えるべきだと思う。

ちなみに気候の変動を予測するというような規模の大きい予測には、どのような数値を入力するかによって結果は大きく異なり、また予測する未来の時点が遠ければ遠いほど当たる確立は低くなる。この数値だが、非常に様々あることは一般人のわたしたちには案外知られていない。様々な人が様々な統計を取り、様々に分析している。ではどのようなものが一般的になるのか?それはその時代の主な思想の潮流で決まる。更に政治的、あるいは経済的利害が作用する。

次のような本を読んでみるのも、面白い。
「統計はこうして嘘をつく」(ジョエル・ベスト)
「メディア・コントロール」(ノーム・チョムスキー