雨の日はヘミングウェー

無人島に持って行く本を一冊、といわれたら迷わずヘミングウェーとサリンジャーと答える。無人島なのだから文句を言う人もいまい。

この数日は雨が多く、部屋で読書という日が続いた。迷うことなくヘミングウェーの短編集を手にとって一つ一つの文章を堪能した。

例えば「殺し屋」は何度読んでもしばらくしてまた読みたくなる作品の一つだ。なぜか、それは多分、人生の一コマに似ているからだと思う。人生の中で明確な答えが出る問題はごく少ない。矛盾や不公正に充ち満ちている。そんな状況に出会った時に感じるやるせなさ、それがこの作品にも描かれている。ごく短い、飾らない文章の集積であるだけに、それがより意味深く感じられるように思う。

サリンジャーは、何度読んでも作品の意味するところが理解できないけれども、何かしら訳の分からない魅力があって何度でも読む。作品が描き出す世界全体が、ごく薄いガラスでできているような感じがして、そのはかなさが好き。

似たようなことが映画にもある。理解できず、たいして面白くも感じられないけれど、何かしら惹きつけられるものがあって、目が離せない。これはきっと将来のいつの日にか、心の中で意味をなすに違いないと、根拠のない「感じ」がする。