福島第一原子力発電所、吉田所長が語る現実

件の玄海原発再稼働についての吉田所長の意見が報道されているので、ここに記載する。現場を知悉している人ならではの意見で、説得力がある。福島第一原子力発電所の現場に照らし合わせながら述べていることも興味深い。

更に私が興味深く読んだのは、循環冷却装置の度重なる不具合についての部分だ。レバーの位置が間違っていたとか、操作を間違えたとか、報道される装置停止の原因があまりにも単純なミスのように思えたが、そこにもそれなりの理由があった。三国の異なる装置を組み合わせたからというだけにとどまらない問題だ。

玄海原子力発電所再稼働について:

この政治のゴタゴタで玄海原発の再稼働は遠のいた。そして政府は7月19日にも、福島第一原発の事故収束に向けた新たな「工程表」を発表するとしている。果たして本当に「安全」だといえるときは来るのだろうか−−3月11日の事故以降、現場に詰めて作業にあたってきた福島第一原発の「最高幹部」に、本誌は6月以降、幾度となく取材を繰り返してきた。いわば原発のすべてを知るこの人物が、こう語るのだ。
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 いま玄海原発の再稼働問題が取りざたされていますが、フクイチ(福島第一原発)の事故を経験した私に言わせれば、そんなバカなことはやめたほうがいい。玄海原発1号機の操業開始は1975年で、老朽化が心配。それに、現地はフクイチよりも地盤がやわらかいようです。正直、再稼働して大丈夫なのかと感じる。

 私が、こう言うのには理由があります。フクイチが地震と津波、どちらでやられたのかといえば、まず地震で建屋や配管、電気系統など、施設にかなりの被害を受けたのは事実です。地震直後、「配管がだめだ」「落下物がある」などと緊急連絡が殺到しました。制御室からも「配管や電気系統がきかなくなった」などと、すさまじい状況で、多くの作業員が逃げ出した。耐震性に問題があったのは否めません。

 こうした事態に対応している間に「津波がくるらしい」という話が入り、とにかく避難が優先だと施設内に放送を流し、情報収集を進めているうちに津波が襲ってきた。これで、街灯やトイレなど、地震後もかろうじて通じていた一部の電源もほぼ通じなくなった。完全なブラックアウト(停電)です。

 そのとき頭に浮かんだのは、どうやって冷却を続けるか、です。すぐに人を招集して、とにかく電源回復を急ぐようにと指示した。何とか電源を回復できないかと、(東京電力)本社に電源車を要請するなど、もう大声で叫ぶばかりでした。

 津波の破壊力を実感したのは、電源確保のために状況を見に行った作業員から「行く手をはばまれた」「瓦礫(がれき)で前へ進めない」などと報告を受け、携帯写真を見たときです。本当にとんでもないことになっていた。本社に電源車を頼んでいるような悠長なことではとても無理。自分たちで何でもやれることはやらなきゃ、もう爆発だと覚悟しました。すぐに車のバッテリーなど、原発内でとにかく使えそうなものを探させました。

 日が暮れ、周囲は真っ暗で作業がはかどらない。携帯電話の画面を懐中電灯代わりにしている−−現場からは、こんな報告が次々と上がってきました。

 このあたりから「最悪のケースもありうる。海水も早い時期に決断せねば」と覚悟しました。メルトダウン(炉心溶融)も、ありうると思っていた。

 ただ、これがもしも地震だけだったら、要請した電源車なども早く到着したはずですし、非常用電源なども回復できた可能性が高い。爆発は防げたと思います。

 ここまで事故が深刻化した原因について、津波対策がおろそかだった、非常用電源の設置場所が悪かったなどと言われますが、私は何よりも、操業開始から40年という"古さ"が、地震・津波に負けてしまったと感じています。いくらメンテナンスで部品を新しくしたところで、建物は同じ。原発自体の耐用年数だけでなく、建物や構造など全体的にみて、40年は長すぎた。

 実際、免震棟ができる2年ほど前までは事務本館しかなかった。それが、地震だけでメチャメチャになり、使えない。これは、玄海を始め、全国の原発に当てはまることだと思いますね。

循環冷却装置の稼働について:

注水をしている限り、汚染水が増えるばかりで安定はありません。フクイチの1〜4号機ともに循環システムがうまく機能して初めて冷却、安定となります。とにかくまず冷却して安定させなければ、先が見えません。ペースは遅いかもしれないが、一歩ずつ確実に近づきつつある。

 もちろん、現場ではもうこれ以上、汚染水を海に放出することは許されないと認識しています。ただ、なぜか本社は海に流すことをいとわない雰囲気があって、温度差を感じます。

 システムの管理は、東芝が中心でやっています。米キュリオンと仏アレバの機器を組み合わせ、日立が塩分を取り除く装置を担当している。

 システムの構成については、現場からも提案しました。でも、本社から、
 「もう決まった。これでやりなさい」
 と日米仏の装置を一つにまとめる方式になったのです。現場としては、日本だけで十分やれると考えていました。しかし、政府同士で商取引の約束でも交わしたのでしょうか、本社のある幹部は政府や経産省との絡みも暗ににおわせて、「勘弁してくれ。こちらでもどうにもならない」ということでした。

 てこずったのはアレバの装置です。仕様書などはフランス語だけでなく、一部がイタリア語で書かれていて大混乱でした。原発関連の言葉をイタリア語で読みこなすのは難しく、アレバに問い合わせても、肝心なところは「国家機密で言えない」と拒絶されるのです。

 結局、循環システムが稼働するまでに、バルブの開閉トラブルやフィルターの目詰まり、装置の接点で想定外の放射線量が出るなど問題が起き、何度も止まりました。統括した東芝も「オールジャパンでやっていれば......」と言っていた。

 とはいえ、アレバの装置の威力はさすがにすごい。放射性物質はきれいに除去されています。

 ようやく動き始めたといっても、水回りの作業はトラブルがつきものです。現場で「ぞうさん」「シマウマ」などと呼ばれている注水車もポンプの調子が悪く、よく中断しますから。

 それに、まだまだ瓦礫などの線量が高く、作業がはかどりません。1号機では、原子炉建屋の1階と2階にある配管で循環システムを接続するつもりでしたが、線量が高すぎるため、別の配管を使わざるをえなかった。無人ロボットも、瓦礫を片付けられずに入れないところがたくさんあります。

以上、週刊朝日より一部抜粋(http://www.wa-dan.com/article/2011/07/post-135.php)。この他にも政治対応について記載がある。