野澤クツシタ 尻尾の骨を脱臼すも、4日目にして回復す

8月18日木曜の朝、クッチャンはいつもの様にご飯を食べて、出かけていった。

木曜の夜、私が寝ようと二階に上がると、クッちゃんはもう私のベッドで長くなって寝ていた。こんなことはたまにある。

19日金曜の朝、私が起きてみるとクッちゃんはそのままの姿でやっぱり寝ていた。おしりの近くのシーツが濡れている。こんなことは初めてだ。様子がおかしい。呼んでみても元気なく私の方を向くだけだ。

抱いて階下に連れていっても動こうとせず、水も餌も口にしない。しかもおしっこが漏れる。自分で調整することができないらしい。病気か、怪我か、、、体を見てみても怪我はない。しばらく経つとゆっくり立ち上がって向きを変えた。ほんの少しなら移動もできることもわかった。が、動いているあいだじゅう少しずつおしっこが漏れる。

9時、病院につれていく。レントゲンや血液検査をした結果、内蔵に異常はないが、尻尾の付け根の関節がずれており、付近の神経を圧迫して膀胱の制御ができないのではないかということだった。私の推理によれば、くっちゃんはいつものように二階の窓から下の倉庫の屋根に飛び降りたに違いない。このごろの雨で湿っていた屋根に着地したときに、足が滑って尻餅をついたのだろう。

自然に治ることもあるが、どうなるかわからないという。奥のほうでは何やらゴソゴソと薬を出したり点滴らしき用意をしているのが見えたので、病気でないならとりあえずうちに連れて帰ります、と先手を打って連れて帰ってきた。

帰ったあとも、水も飲まず、特別に買った高級ペットフードも口にしない。

20日土曜日。時々顔を動かしたり、体の位置を変えたりするが、静かにしている。やはり飲食なし。私が本を読んでいると、いつものように膝に乗ったり、胸に持たれたりして寄り添ってくる。顎を撫でてやると気持ちよさそうに首を伸ばす。

まる二日というもの水分さえとっていないのに、思ったより弱っていない。むしろ昨日より少し元気になったようにさえ見える。窓のところに行って上の棚をじっと眺め、いつものようにその棚に飛び乗って昼寝しようという魂胆らしい。が、さすがに諦めた。内蔵に異常がないのに食べられないのは何故だろうか。もらった薬も全く投与できず。

21日日曜日。今日も変化なし。相変わらずの飲まず食わずの状態は今日で三日目。が、さほど弱っている様子はない。昨日よりもたくさん歩いた。口の中に食べ物を入れてやると食べたが、ひどく嫌がる。水も口を湿らす程度。

22日月曜日、本日。ソファからぴょんと飛び降りた。昨日はよじ登ることはできたが飛び降りることは出来なかった。相変わらず飲まず食わずにもかかわらず、昨日よりも元気だ。故障がだんだん治ってきたのかな。朝からあちこち家の中で用を足し、ドアを開けたり閉めたりしていると、ドアのところまで来て外に出たそうにしている。体力もあまりないに違いないからちょっとだけ外に出してやろうと思ってドアを開けて好きにさせたところ、ちょこちょこっと走って裏のドアから外に出て、ちょうちょだの鳥だのを眺めている。しばらくしてもうそろそろ中に入れてやろうと思って近づいていくと、4日近くも水さえ飲んでいない体とは思えない素早さで藪の方へとととっと走って行ってしまった。横にして積んだ竹の束の上にそ知らぬ顔で座っているので、早くこっちへいらっしゃい、と注意するも、全く聞き入れず、ばさばさと藪をかき分けて近づいていくとまたもやさっと向こうの方へ行ってしまった。

一体どこにそんなエネルギーがあったのか。全く不思議だ。3日と半日は少なくとも、食べ物はおろか水さえ口にしていない。しかも脱臼したしっぽはぶらぶらのまま、どのようにして体力を維持し、しかも回復までしたのか。動物の持つ回復力恐るべし。

かなり前に犬が頬のあたりを風船みたいに腫らしたことがあったが、それはマムシに噛まれたのが原因らしかった。あら大変、医者に行かなくちゃという私に、父が、放っておけば治るさといったので放っておいたらそのとおり、数日ですっかりもとに戻っていた。野生で生きていかねばならない動物たちはそれなりの力を持っているのだと、今回のくっちゃんで改めて感心した。

そもそも獣医には行かないでおこうと思ったのだが、目の前ですっかり元気をなくしている猫を見て、かわいそうになってつい行ってしまった。獣医は二三日入院して点滴したほうが良いと薦めたが、連れて帰ってよかった。人間も動物も、なるべく自然の摂理にかなった生き方をするべきだと、私は思っている。私は実家にいる頃から多くの動物が生まれたり死んだりするのを見てきたが、特にその死に様には大いに学ぶものがある。