人に優しい経済

目に見えない資本主義
田坂広志


経済学が文系の学問だということを知ったのは、恥ずかしながら30も半ばの頃だ。


政治経済を否が応でも勉強しなければならないことになって、とりあえず日経新聞を読み始め、更にどんどん進んでいくうちにケネス・ガルブレイスに出会った。この出会いは劇的で、それまで私が経済に対して抱いていたイメージを一変させ、なるほど経済とは本来人のためにこそあるべきである、と知ったのだった。


ガルブレイスの本は手に入る限りのすべてを読破したが、一貫して優しい経済の姿が解かれている。すなわち過去十年以上も私たちの暮らしを席巻している市場原理主義に基づいた経済活動を批判し、富の分配を説いているのだ。経済は拝金主義者のものではないのである。


田坂広志という人を最初に知ったのは報道番組であった。BSフジのプライムニュースである。この番組は、招くゲストが多種多様な上に、興味ふかい話題を提供し、なにより、アンカーがゲストに対応できるほどの知識を持っているので、ゲストから十二分にその頭脳にある内容を引き出している。(せっかく高い知識を持ったゲストを招いても、インタビュアーに知識がなければ無駄に終わる。)この時は原子力発電の是非を討論する番組で、田坂広志氏はすでに大学生の頃から放射線や原子力分野に関わっていて、以後も継続して同分野の研究をしている人であり、原子力については第一人者といってもいいような深い見識を持った人だ。内閣参与としても仕事をしている。


原子力発電については過激な意見や偏った意見が表明されることが多いが、田坂氏は、それまで私が聞いたことのある理論とは異なる、新しい観点から見解を述べられ、強い印象を持った。また、常に公平性を失うことがなかった点、他の見解に対する謙虚な姿勢にも、私は好印象を持った。


他に二三度、氏の意見をテレビで聞く機会があって、きっと本も出しておられるに違いないと思って探したら、たくさんあった。ホームページも開設しておられ、様々な考え方を述べておられる。
(未来からの風 http://www.hiroshitasaka.jp/


早速著書の一冊を買い求めたが、それがこの本だ。経済がグローバル化したことによる弊害が述べられた後に、これからの経済はいかにあるべきか、ただ今見えるその芽、について述べられている。まさに、人に優しい経済への道が示されているのだ。


この著書を読んでいると明るい気持ちになるが、さて、それはかなり希望的観測ではないか、と思わせてしまう現状が、悲しくもなる。