宮沢賢治


一ぴきのエーシャ牛が
草と地靄に角をこすってあそんでいる
うしろではパルプ工場の火照りが
夜中の雲を焦がしているし
低い砂丘の向こうでは
海がどんどん叩いている
しかもじつに掬っても呑めそうな
黄銅いろの月あかりなので
牛はやっぱい機嫌よく
こんどは角で柵を叩いてあそんでいる