ムーンライト・コンサート in 高沢観音

清水の舞台を模したと言われる日龍峰寺が後ろに高々とそびえ、樹齢三百年と言われる杉の老木の枝が差し掛かる下でムーンライトコンサートは行われた。真っ暗な中、スポットライトが当たる舞台の付近には、山の裾からゆらゆらと水蒸気が這い上ってきて周りを覆い、幽玄な雰囲気を醸し出している。深い山に囲まれたこの場所は、遥か下の営みからは隔絶された感がある。折悪しくと思っていた雨も、この場を特別なものに知るため、むしろ幸いした感じだ。

最初はコールMUGIのコーラス。女性四人のグループが澄んだ声で「まっかな秋」、「小さい秋みつけた」などを歌った。ハーモニーもよく、その声はまわりの樹々の枝に染み渡るようだった。コーラスを心から楽しんでいるという雰囲気が伝わってきて、私はとても好感をもった。音楽は楽しいものだ。

次は我がブラスバンド部の後輩たち、といっても一世代違う若い人達だ。出し物は昭和名曲メドレー、里の秋、上を向いて歩こう、など親しみやすい曲を集めており、聴衆の年齢にも配慮した良い選曲だった。これは大事なことだと思う。今回出演したのは8人だが演奏したがメンバーは11人だとか。皆がそれぞれに仕事を持っている中で、敬老会や保育園を始め、コンサートにもジョイントで出演しているという。仕事以外にこのような社会的な活動をしているということを知って、嬉しくなった。

続いて渡辺美季という人の独唱。荒城の月、虫の声、野菊、里の秋などなどのメドレーに続き、本人がとても好きだという「長崎の鐘」という歌も歌われた。そして最後に「ほほえみ」。この歌詞には感動した。オペラにも参加したことがあるという紹介のとおり、渡辺さんの素晴らしい声量のある声が周りを取り囲む森全体に響き渡るようであった。伴奏といっては小さなピアノがあるだけで、声帯が立派な楽器のようだった。

歌のピアノ伴奏をされたのは青木園子さんで、実はこの方は娘が小学校の頃に一度担任だった人だ。このコンサートに行ってみようと思った理由の一つがこれであった。青木さんはこのコンサートのプロデュースをされているということだ。ますます活躍されていて、嬉しい。

これで前半が終了。このような小規模の音楽会には、これまでの経験からあまり期待はしていなかったが、期待は良い意味で大きく外れて、すっかり心満たされた時間だった。

後半の出し物もあったが、これについてはあえて触れないでおこうと思う。この満たされた気持を壊したくないからだ。