空飛ぶタイヤ

空飛ぶタイヤ
池井戸潤

我が岐阜県の八百津出身の作家が直木賞を取ったということはすでに聞いていたが、過去二回の直木賞作品があんまりつまらなかったので読む気をなくしていた。ところが、私が素敵だなと思っている友人宅の本棚に(人の本棚を覗くのが趣味である)、受賞作品の「下町ロケット」が置いてあったので、興味をひかれて借りることにしたら、彼女がこの本も一緒にかしてくれて、こっちのほうが好きだと言ったので、早速読んでみたのがこの本である。この題から見ても、永久に手に取りそうにない本であった。

しかしこの本は大変面白く読めた。構成は非常に緻密で、細かい部分の丁寧な作業が物語全体を否応なく面白くしている。

この物語は以前に実際にあった自動車事故を素材にとっているらしく、それが読んでいる頭の中に背景として蘇り、その点でも興味は尽きなかった。

経済的利益と権力欲が織り成す細かい網の目の上で魑魅魍魎が跋扈する中、そのどす黒い愚かな世界に翻弄される人々。一般人あり、網目の中で生きている中小企業人、そして警察。物語の主流はもちろん、小さな支流にも作者は手を抜かず、精緻な筆を駆使している。そうした細部がそれぞれの小さな物語をも形成しており、一気に読み通せるほどの面白さだ。

出版社が実業之日本社というところが、小説としてはちょっと意外だった。この出版社からでたのは、この内容からくるものだろうか。

作者はいくつぐらいの人だろうかと思って後付を見ると私より8歳年下の人だった。面白い作品を読み終わると、ついどんな人が書いたんだろうと気になる。