便所のお化け

便所という言葉を聞かなくなってからもう何年にもなるような気がする。

隣村には、指で押すとぐしゃっと潰れそうな集会場があって、その隅に文庫がある。文庫の隣は便所だ。この便所は純和式のやつで、細長い楕円形の便器の下は深い暗闇だ。灯りも暗い。

ある日、文庫の当番をしていると、小学校の男の子がやってきて、トイレ貸してくださいというので、どうぞと言ったが、その子はなんだかもじもじしている。どうしたのと聞くと、トイレのドアを閉めないでという。いいわよと答えると、彼はドアをそぉっと開けておずおずと便所の中に入っていった。ちょっと間をおいて、出るまでそこにいてください、とまた言った。ええ、きっとここにいるわ、と私。

暗闇のない洋式トイレでは、お化けも出にくいらしい。