吉村昭 「破船」

吉村昭 「破船」

舞台はある島の、湾に面した戸数17ばかりの小さな漁村である。ちょんまげを結っているとあることから、時代は100年以上前に違いない。海から採れるすこしばかりの海藻や魚介類を食料として暮らしているが、そればかりでは足りるはずもなく、村人はもう一つ別の、思いも寄らない手段で不足を補っている。

この物語でまず胸を打つのはその貧しさだ。鋭いノミのような文体で、日々の貧しさと、その中で生き抜く村人の暮らしが浮き彫りにされている。その暮らしようは私の想像をはるかに超えたものだ。貧しさはややもすると人の心をすさませるが、村長(むらおさ)の深い知恵と行動がこれを周到に制御している。その長の行動や言動は、リーダーとはかくあるべしと思わせるものだ。

読んだ後に、衝撃が残る本だった。