グスコーブドリの伝記

宮沢賢治グスコーブドリの伝記

ひとつ読み終わっても、すぐには次の本を読みたくない本というものがある。物語の筋をじっくり味わい、心のなかで何度も反芻し、登場人物の行動や作者の人生観をあれかこれかと考える。私にとっては、そんな本の一冊がこの「グスコーブドリの伝記」だ。

ブドリは作物の出来不出来をおひさまと風にのみ托む貧しい村に生まれた。ある年、そのおひさまと風の恵みを受け取ることができない年が巡ってくる。一家には食べ物がなくなり貧窮する。父親は「ちょっと森にあそびに行ってくる」といって出かけたまま帰らず、日を置かずして次に母親が「お父を探しにゆく」といって、すこしばかりの食べ物を戸棚に残して家を出る。

ブドリは当初過酷な状況に陥るが、その後縁あって火山の研究をする機会に恵まれ、天気に頼らなければならない村の農業を何とかしようと日に夜を継いで勉強する。そうした中、ブドリの頭にあるのはいつも村のこと、両親のこと、そして妹のことだ。なんとかして村の窮状を救いたい、それだけがブドリの願いだ。そして最後には身を挺して村を救うのである。

小さい頃から本を読むことを私が勧めるのは、なにも知識を得るためではない。物語の中の人物は、子供が大きくなって行く過程での良いロール・モデルとなるからだ。実際私の価値観も、概ね小学校や中学校の時代に読んだ数多くの物語の主人公によって培われたことを実感する。

正しい倫理観を持った主人公に、小さい頃から触れさせることによって、親が言葉で言って聞かせなくても、子供は正しい倫理観を持つようになる。モラルの低下がいろいろな側面で問題になっている昨今、小学校での読書教育の持つ意味は大きいと思う。

家庭では、どんな本を与えて良いかわからないという人もあるかもしれない。小学校の子供でも中学校の生徒でも、いわゆる名作といわれている作品を与えておけば間違いはない。