三浦哲郎「白夜を旅する人々」

抗いがたい運命というものが、確かにあるのかも知れないとこの話を読んで思った。真水に垂らした墨汁が静々と水の隙間をまんべんなく縫って行き渡り、やがて真水は薄墨になる。この小説に描かれている一家が背負ったのはこの墨汁のようなものだった。どうしようもなく、死に対する親和性が家族に広がってゆくのを、誰も止めることができない。

情感を感じる文章によって紡ぎだされるこの底の見えない悲しい物語には、出口がないように見える。

小説には、どんな悲しい、救いがたい話でも、どこかに光が見えるものだと私は信じてきたが、この話にはとうとうそれを見出すことが出来なかった。冷たい死を、最初から最後まで描いているにもかかわらず、著者の温かみを感じる小説だった。