失語症検査を垣間見る

ひょんなことから失語症の検査の現場を見る機会を得た。

失語症というのは相手が言っている言葉が理解できない、字が読めないといった言葉の障害である。頭を打ったり、脳に酸素が十分に供給されなかったりして起こる。従ってもともと知っている言葉を聞いてもわからない、話せない、読めない、書けないという障害である。

この失語症の検査を見ていると人が言葉をどのように認識するのかということが具体的にわかって興味深い。例えばイヌを認識する場合、犬をみて犬であると認識し、言葉として使う。そこにはイヌを犬として目で確認し、犬という字を思い浮かべ、犬という発音を聞き分け、文章の中で正しく用い、正しく発語するという段階がある。この一連の活動を脳全体で行なっているのだが、目で確認したり耳で聞き取った情報はまず後脳に伝えられ、更にその情報が前頭葉で処理されてイヌが犬として認識される。

失語症の程度を検査するテストでは、ひらがなが読めるか、漢字が読めるか、という識字試験の他に、動物などの絵を見せてそれが何かを言わせるという簡単な単語レベルのものから、短い文章からだんだん複雑な文章を聞かせて、繰り返させ、それに当たる絵が認識できるか、いくつかの絵の中から選択させる、という試験があった。繰り返させるのは、言葉を記憶することができるかを診ているらしい。

具体的にはこんなふうに行われる。簡単な絵を見せてそれを説明させる。例えば、子供が寝ている絵を見せて、どんな場面か尋ねる。また、説明文を聞かせてそれに該当する絵を選択させる。

以上のようなテストが20分ほどかけて行われた。この患者は「子供が風船をふくらませています」というような単文は聞いて理解し、繰り返すことができたが、「男の子が、女の子が絵を書くところを、見ています。」という文章を繰り返すことができなかった。ところがそれを後のテストで、文章で見せられ、それに該当する絵を選択する試験では正しく選択することができた。やはり読むことというのは物事の理解に大きな役割を果たすということだろうか。このあたり、大いに好奇心を刺激されて、高次脳機能障害関連と、失語症関連の本を早速図書館で借りてしまった。