高次脳機能障害

橋本圭司 「高次脳機能障害」

前々から脳の機能にはとても興味があって、オリヴァー・サックスの著作などを読みあさっていたが、つい最近、高次脳機能障害というものがあることを知った。この障害自体、認知されてからまだ日が浅い分野らしく、診療科も独立したものはない。にも関わらず、この障害に悩んでいる人は随分多いらしい。そこでやっと政府によってひとつの対策が講じられたのが、2001年に設立された高次脳機能障害支援モデル事業(http://www.rehab.go.jp/ri/brain/)というもの。だが、まだまだ浸透しておらず、この障害を負った人は精神科や脳外科で一定の治療を受けた後、家庭で支援がないまま暮らしているということだ。

高次脳機能とは何か。私達が日ごろ社会の中で問題なく暮らせるのは、眼や耳から得た情報に基づいて頭で判断して、適切な形でそれを出力できるためだ。この適切に出力する機能を高次脳機能という。従ってこれが障害を受けると、しかるべき時にしかるべき行動が取れなくなる、話ができなくなる、など、問題が脳であるだけに、日常の様々な側面に影響が出る。大雑把にいうとそういうことだ。

この本には脳の様々な機能、その障害によって発生する症状、対処法、家族への助言などが詳細に、わかりやすく記されている。この障害を受けて最も頻発するのが失語と脱抑制だそうだ。つまり言葉を離せなくなったり、自分の感情や行動を制御できなくなったりする。

脳がいかに巧妙に働いて私たちの行動を社会的に制御しているか、これを読むと驚く。知的好奇心がますますくすぐられる。この障害を診断された人は少ないかもしれないが、自分の感情を抑制できないという症状を含め、他の症状も、私達の普段の生活に思い当たるフシが多々あるし適用できる余地もある。脳の働きを知るためだけにでも一読の価値はある。