壊れた脳、生存する知

山田規畝子 「壊れた脳、生存する知」

若干34歳までに三回も脳内出血によって脳の障害を受け、徐々に認知機能が失われてゆくさまを、医師である本人が書き綴った文章です。

時計が時計であることはわかるけど、5時なのか7時なのかよくわからない、階段を見てもそれが上る階段なのか降りる階段なのかわからない、カップをソーサーに置いたと思ったらスープ皿の中に置いてしまった、、、こういった、日常誰もが出くわす普通の風景にまつわる混乱が日々の暮らしとともに書かれています。

脳の機能障害についての本は、患者を診た医師が客観的に書いているものばかりで、患者本人が書いているのは珍しいと思います。著者は主婦でもあり、子供や夫との普段の暮らしの中で、脳に障害を負った人に見える世界を具体的にわかりやすく、親しみやすい言葉で綴っています。ちょうど今私が書いている文章のような語調です。もうちょっとユーモアも交えていて、読んでいて面白い。