同居人、フロゴソゴソ

ある日湯船に浸かっていると、頭の後ろ方でカリ、カリ、ゴソゴソ、シャッシャッ、、、

またある日は、風呂の排水口が詰まったらしいので、蓋を開けてみてみると、無数のスポンジの細かい切れっ端が立坑からあふれていた。何だこりゃ!!

別の日には、洗濯をしていると風呂の壁のあたりで何かがもぞもぞ動いている気配が。

「ねずみが紛れ込んで、バスタブにつけてある断熱材を引っ掻いてるんです」と、近所の大工さんがこの謎を解いてくれたが、違う。ねずみのようなせせこましい動きではない。もっと大きなケモノで、寒がりであり、やや緩慢な動きをして、スポンジを引っ掻くのが趣味の動物に違いない。

これはひょっとして、かの水木しげる翁が本棚とトイレの壁の間の、使わなくなった物入れに住みついているのを発見してびっくらこいたというあのフロゴソゴソではないだろうか??

一体どこからどうして入ったものか、そもそもうちの風呂は外壁と内側のタイルで密閉されていて、バスタブは壁とタイルの間に塗り込められているのである。想像するに、田山花袋のサンショウウオではないが、子供の頃うっかりバスタブの後ろの狭い隙間に入り込んで出られなくなり、そのまま成長してしまったのではあるまいか?

去年の今頃、我が家にはザルモ・リモリが勝手に住みついて、一刻私を楽しませてくれた。彼は、あるいは彼女は、知らない間にどこへやら旅立ってゆき、また今年はこれである。30年も住んでいると、家蜘蛛タロー、イタチのアソー、そしてフロゴソゴソ、いろんな生き物がやってきて勝手に居候する。

「そんな山奥に一人で住んでて怖くない?」
たまにそう聞かれるが、とんでもない。我が家の同居人の他にも、前の山にはフクロウ、後ろの薮には美しい声で啼く鳥たちがいて、そもそも一人だという気がしないのである。