これはまさに 運命という他ない

図書館の古本祭りがあるというので、期待はしなかったが行ってみた。初めて。

広い会場にずらりと並んだ数千冊はあろうかという本を端から見る。やっぱり欲しいのはないな、、、と思って進んでいくと、なんと、長いこと探していた本があるではないか!!

この本は私の価値観の一部を形成したともいえる本で、私が中学校の頃夢中になって読んだ本である。



小学館、少年少女世界の名作文学

世界的な名画を表紙に掲げ、挿絵は上の写真で見てもわかるように画家が描いている。子供向けだからといってその年齢に妥協しないところが素晴らしい。それぞれの話にそれぞれの画家が挿絵を描いているので、絵を見るだけでも楽しく、見甲斐がある。大好きな画家、アンドリュー・ワイエスのお父さんの挿絵も入っているから、たまらない。挿絵はそれ自体を壁に飾っても装飾品として見劣りしないほどの出来である。

この全集に収録されている物語はおおむね少年期の読者を対象としたもので、その選択も良い。いわゆる名作といわれる作品を、小学校から高校にかけて私は無数に読んだ。一つの作品を読む中で、その中に引用されている話や、作家を頼りに次に読む本を選択するという方法で次々と読んでいった。物語のドラマ性は日本のものよりも欧米の物の方が高いせいか、成人するまではほとんど欧米のものしか読まなかった。

この全集の何よりも素晴らしい点は翻訳だ。昔の本はだいたいにおいて、今のものに比べて翻訳が非常に優れている。美しく、よどみない日本語に訳してある。読んでいても少しも違和感がない。新しくなればなるほど、翻訳の日本語は粗末になり、ひどいのになると原文が推測できるようなものだ。海外の翻訳本が増えるに従って、また、間を置かずに日本でも出版しようとする企業の時間的余裕のなさから、翻訳のレベルは下がってきた。そうして、違和感のある変な日本語がそれとともに定着しつつもある。

私が生きる縁(よすが)とする価値観の礎はここで形成された。すでに手放してしまっていたこれらの本を、もう一度手元に置きたいと思ったのは数年前のことで、ネットにあるあらゆる古本を探したが、すでに絶版となって久しいこともあり、入手できたのはわずか5冊だったが、昨日の古本市で再び出会ったのだ。これを運命と言わずして何と言おうか!その時の感激たるや、狂喜乱舞するほどであった。大切にしたい本はそれほど多くないが、これはその中のひとつである。

持ち帰りできるのは10冊までということで、この本に出会ったのはすでに5冊を手にしてからであったが、この全集のうち20冊を超える本が目の前に揃っていた。帰るに帰れない気持ちで眺め、眺めしていると、天の助けであろう、内海館長がそばにいらっしゃったのである。「なんか良い本見つかりました?」と声をかけて下さったので、胸高鳴る気持ちをお話すると、「この全集は全部持って帰っていいですよ。台車がありますから、それで運んだら?」と言って下さった。これまた、運命ではないか!!

というわけで、生涯の宝ともするべき本が23冊もいっぺんに手に入った、というか、私のところへ戻ってきたのである。自宅の5冊と合わせて28冊となった。全集全部を読んでいたわけではないので、まだ読んだことがない本も沢山手に入った。

「古い本は誰も持ってかないんですよ。」と館長。本は新しいとか古いとかよりも、その内容で選んでほしいものだ。

まさかの出会いとして、経済学への目を開いてくれたガルブレイスが三冊、私の青春時代に思考能力を鍛えてくれたサルトルが1冊あったので、それも頂いて来ました。