日高敏隆 「動物と人間の世界認識」

途中で休憩するのがもどかしいほどに面白い本でした。

私達が見ている木や花は、動物や虫たちにも見えているのでしょうか。いいえ、彼らには驚くほどに違ったものが見えているのです。しかも、私達から見ればごく限られたものしか見えていない。生きていくために必要な最低限の物しか見えていないのです。

猫は陶器の猫を見て本物の猫と勘違いして、ううっとうなりますが、攻撃しようとしてひっかくと初めてそれが猫ではないと認識して、無視するようになる。鳥は雛の姿ではなくその鳴き声で雛を認識する。ちょうちょには、私達が見えない紫外線が見える。などなど。

それぞれの種にはそれぞれ独自の世界があるというところから説き起こし、人間の世界観を分析する。私にはここが面白い。動物や虫のことだけなら、おそらくそれほど面白くなかろうと思えますが、それを人にまで敷衍するところがとても興味深く読めるのです。

人間は科学の力を手にして、全てのものを客観的に捉えることができると信じていますが、いやいやそれはごく一面の真理にすぎない。ほんとうの意味で客観的な一つの世界、すべての人が同様に認識する一つの世界などというものは存在しないのです。私には私の世界があり、あなたにはあなたの世界があり、私に見えているものがあなたに見えているとは限らない。そのように考えると、この世界が百万倍にも多様化する。不思議な世界に私たちは生きているのです。

動物や昆虫に見えている世界についての記述も大変興味深いのですが、人の世界観についての記述も独自であり、それはまさに日高敏隆の世界なのです。