夏はいつから
8月に入るとまもなく、朝夕に木立の中で薄いすりガラスを打ち合わせるような、ひぐらしの声が響き始める。
あちらからもこちらからも
涼し気な音が
さんさんと降るように鳴り響く。
そして私は、夏も終わりだな、と思う。
夏はいつやってきたのか。
私の中では、
梅雨が開けて最初に聞く、ジージーという蝉の声から始まる。
まだ暑いというほどではないけれど、それは明らかな夏の訪れだ。
ジージーという鳴き声に、
やがてジャージャーという鋭いアブラゼミの声が混じり始めて
太陽はカンカンと照りだす。
洗濯物が陽気に乾き始める。
空は青く、高い。
庭の木陰が嬉しくなる。
そうしてある日の夕方
かすかなひぐらしの声が、山のちいさい隅から聞こえてくる。
急に朝晩の風は爽やかになり、
それは日毎に涼しさを増す。
私の夏はこんなふうにやってきて、こんなふうに私から離れてゆく。