「ワールド・カフェをやろう」 香取和昭、大川恒著 (日本経済新聞出版社)

ワールド・カフェを国際交流の場と思っている人は、私だけだろうか。

名前から想像して、いろんな国の人が喫茶店に集まって楽しむ、そんなふうに私は理解していたが、つい最近そうでないことがわかって、早速本を買ってみた。すると大違い。これは創造的な場であることが分かった。この本にはワールド・カフェがどんなものか、その進行の仕方などが詳しく書かれている。一部をここで紹介してみようと思う。

ワールド・カフェの由来は、その発案者であるアメリカ人のアニータ・ブラウンとデイビッド・アイザックが、お茶を飲みながら話す会話が予想外にクリエイティブかつ建設的なものであることを発見したことにある(同著者「ワールド・カフェ―カフェ的会話が未来を創る」ヒューマン・バリュー発行)。これをシステム化したのがワールド・カフェだ。

ワールド・カフェの基本哲学としては以下のことが挙げられている。
人々による会話が蜘蛛の巣のようにつながり合って未来が創造される
生命体システムの基本はネットワークである
システムが多様性にとみ、創造的な方法で結合されることにより知性が生まれる
我々は必要とする知恵は資源を集合的に所有している
他。

こうしたワールド・カフェが実際はどのように運営されるのだろうか。カフェでは必ずテーマが設定されており、進行は4つの段階にわかれている。
1. 最初は4人程度の小さなテーブルが幾つか用意されてそこで話し合いが行われるが、これはいわば雑談のような気楽なもので各自が思いついたことを発言する。
2. その後各テーブルに一人を残し残りの三人は別のテーブルに移動する。移動先のテーブルでは、そのテーブルに残った前のグループの人からそれまで出た話の内容を聞き、更にそこで意見交換をする。
3. その後再び元のテーブルに戻って、それぞれが別のテーブルで聞いてきた話しを共有して更に会話を深める。
4. 最後に全員で、各自が得た新しい知識や考えを出し合う。

カフェでの会話には到達点とか目標というようなものは設定されておらず、結論を導き出す必要はない。カフェを気軽な雑談と位置づけながらも、その自由な会話から創造的な考えや共有したい意見が出やすいよう、よく配慮して構成されている。

この方法はあらゆる話し合いに有効なのではないかと直感した。
本の中に「分断の文化からつながりの文化へ」という項目があって、人と人の間の距離が遠くなっている今、そのつながりを取り戻し、みんなで話し合うことによって関係の質を向上させるべきだと書いてある。この質が向上すれば思考の質も向上し、それが行動の質の向上につながり、その結果質の高いものがもたらされるという論理だ。まさにそのとおりだと思う。小難しい言葉が並ぶが、要は、人と仲良くなれば人に配慮するようになり、配慮するためにはどうしたらいいのか考えるようになり、それに基づいて行動することで様々な良い結果、例えば地域全体の絆を高めたり、環境が良くなったりするということだ。

私たちはふとした偶然の出会いから新しいヒントを得ることが時々ある。このごろ盛んに使われているフェイスブックでも、思いがけない人とのつながりができることで知的な触発を経験する人も多いのではないだろうか。実は私自身がそれを最近経験してこの本に出会ったというわけだ。

話し合いというものは場所や課題を問わず必ず必要なもので、それが実のあるものになればそれに越したことはない。何もワールド・カフェなどと言う言葉と形式にとらわれず、地元の自治会や、市民活動などの話し合いにも応用できると思う。

カフェを実践する意義は、自由な発言の中から新しい見方や建設的な意見を引き出し、それを共有することにあるのであり、形式はあくまでこれを助けるためのものだ。従って、話し合いを意義あるものにするため、どうにでも好きなようにアレンジすれば良いと思う。大事なことは、自由に発言しやすい環境を作るということなので、私自身は小人数のグループに分けるということが一つのポイントだと思う。