蜂を追う

昨日栗を拾っていたら道端に軽トラックが止まって、二人の初老の男の人が降りてきて、栗の木の方に棒を差し出して何か言っている。「あそこにおるわ」などと言っているので、何してらっしゃるのと聞くと、蜂を追いかけているという答え。

へえ、まだそんなことしてる人あったんだと、思わず懐かしくなった。

子供の頃、祖父は農作業が終わった今頃、カエルの皮を剥いて木の枝につけておいて、ヘボという蜂の一種をおびき寄せ、それを捕まえて脚かどこかに真綿を付け、それを放って山の中を追っていった。巣にたどり着くと、幼虫を取って来てご飯に炊いた。

ヘボというのはハエの三倍か五倍くらいの大きさで、ごく小さなハチだ。見やすくするために真綿をくっつけるのだが、それとて山の中を飛んでいくヘボを追う目印としては心もとない。そんな小さな真綿を追って、当時は車もないので脚で山の中をどこまでも追ってゆく。そうしてちゃんと巣を見つけるのだ。これはすごい技術ではないか。

祖父は川へ魚も捕りに行ったが、ヘボ捕りも魚捕りも大いに楽しんでいた。

ヘボや蜂を追って野山を駆ける人はもういまいと私は思っていたが、昨日突然としてヘボ捕りに会い、嬉しくなった。「大変でしょう」と世辞を言うと、「好きやでな」との答え。暮らしの中に楽しみがあるということは、幸せなことだ。

今日は朝からおひさまが眩しく、空気がとても澄んでいる。あのおじさんたちは今日も蜂を探して山を歩いているに違いない。