キーボードの衝撃

パソコンのキーボードの調子が悪いのでこの際新しいのを買ってみようと、ネットで調べてみると、なんと500円から販売されている。500円だ。カバーかと思ったらどうもそうではない。その上が700円、1000円とある。

キーボードが500円?少なくとも5000円はするに違いないと覚悟を決めていた私はびっくりした。複雑な装置ではないにせよ、50以上もあるキーを押してそれぞれの電気信号を伝えるものだ。それが500円!何度も値段を書くが、それくらいびっくりした。

あまりの安さに何か怪しいものを感じて、それでも1500円のものを買ってみることにした。まさかキーボードの写真が送られてくるんじゃあるまいね。

このあたりでふと、頭の中にあることが浮かんだ。

500円のキーボードを製造している工場で働いている人はどんな待遇を受けているのだろう?

以前Sweat Shopという本を読んだ時に、イブ・サンローランとかピエール・カルダンなどの有名ブランドの服のパーツを作る縫製工場の実情を知った。それはアメリカの話であったが、低賃金で過重労働を余儀なくされている労働者の有様が詳細に書かれていたのだ。彼らは、今ではよく知られるようになった言葉だが、ワーキン・プアーと呼ばれ、低賃金で働かざるをえないために保険に加入できず、長時間働いても貯金ができず、フードスタンプ(低所得者用の食料購入クーポン、生活保護の一種)に依存する暮らしから抜け出ることができない。10年以上前に読んだ本だ。

また最近ではNHKのドキュメンタリーで、仕事を求めて農村部から都市部へと移動する若者が、劣悪な労働環境で働く様子を報道していた。

印象的だったのは、農村の暮らしと今の暮らしとどちらが良いかという問いに対して、まだ若い女性が、どっちも似たようなものだけれども都市の方が少しだけ給料が良い、と答えたこと。

都市は地方を搾取し、そうして安い労働力を提供する国を先進国が搾取する、そんな構造がぼんやり浮かぶような気がした。

― けれども日本には狐けんというものもあって、狐は猟師に負け猟師は旦那に負けると決まっている。宮沢賢治「なめとこ山の熊」より引用