歪む生態系

以下の様な記事が日経新聞に載っていた。

モンサント社ラウンドアップという除草剤を開発し、その除草剤を撒いても枯れない作物ラウンドアップ・レディを、遺伝子組み換えによって開発した。

農業の効率は向上したが、その結果、この除草剤に耐える新種の雑草が生まれて問題になっている。

自然界は人が思ったよりも柔軟で強い。

スーパー雑草、米国覆う 組み換え全盛、突然変異の影
2012/10/1 12:00
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2101W_R20C12A9XX1000/

除草剤を使っても枯れない「スーパー雑草」が米国やカナダの農地で勢力を拡大している。遺伝子組み換え作物の普及によって一つの除草剤を大量に使い続けた結果、突然変異で耐性を持つようになった。収量が減るなど深刻な影響が出た農家もある。今後被害が世界に広がる可能性が高く、各国の農業関係者は米国の対策を注視している。

■除草剤、1種集中使用で耐性
スーパー雑草はかつては各地に点在する程度だったが、今では推定1400万エーカー(560万ヘクタール)と、日本の国土の6分の1に相当する面積に広がった。米国の全耕作面積では5%以下だが、2007年以降で5倍に拡大したという。2メートル近くに成長するものもあり、コンバインの刃が折れるなどの被害も出ている。

 「大規模で効率的な農業を追求してきた米国だからこそ起きた問題だ」。米国の状況を調査した茨城大学の佐合(さごう)隆一教授はこう指摘する。スーパー雑草の被害は、遺伝子組み換え作物の栽培が盛んな農業地帯が多い。なぜか。

 米農薬種苗大手のモンサントが自社の除草剤に耐えるトウモロコシやダイズなどの作物を開発。他社も追随し、1990年代後半から本格的な栽培が始まった。こうした作物の畑に除草剤をまけば雑草だけが枯れる。組み換え作物の種子は高いが、人手や機械を使って雑草を駆除する手間が省け、農業の競争力向上に貢献したといわれる。

 しかし、雑草の生命力は予想以上に強かった。1種類の除草剤を使い続けた結果、雑草が突然変異で除草剤に耐性を持った。医薬品など抗生物質を使い続けるうちに、抗生物質に耐える細菌が現れるのと同じだ。

 スーパー雑草は組み換え作物と交配し、耐性遺伝子が生まれたのではない。京都大学の冨永達教授は「遺伝子が変異することなどで除草剤に耐える能力を身につけた」と話す。雑草が突然変異して、1種類の除草剤に耐性を持つようになる確率は10万分の1とされる。関係者は当初「耐性雑草は簡単には現れない」と楽観視していたが、「雑草の進化は想像を超えていた」(冨永教授)。

 米雑草学会は米農務省と報告書をまとめ、適切に除草剤を使う農家が少ないことが状況を悪化させていると指摘した。農家はコストを減らすため、推奨されている量よりも少なく除草剤を散布しがちだ。この結果、生き残った雑草が耐性遺伝子を獲得しやすくなった。

■デュポンやモンサント、農薬複数使用を推奨

 被害拡大を受け、農薬メーカーは複数の除草剤を使うことを推奨し、指示通りに動いた農家に報奨金を支払い始めた。米国では除草剤の使用量が増えており、モンサントやデュポン、ダウ・ケミカルなどの農薬部門の業績を下支えする要因になっているとの声もある。

 米大手は複数の除草剤でも枯れない遺伝子組み換え作物を開発することでスーパー雑草を抑え込もうとしている。組み換え作物の種子の販売は利益率が高いからで、新しい農薬の開発には消極的だ。茨城大の佐合教授は「しばらくすると耐性を持つスーパー雑草が出現し、いたちごっこが続く可能性が高い」と話す。

 遺伝子組み換え作物を扱う農家は米国だけではない。ブラジルやアルゼンチン、インドなどは栽培面積が1千万ヘクタールを超えた。こうした途上国の農家は除草剤を大量に使うにもかかわらず、ブラジルやアルゼンチンではスーパー雑草が出現した。

 日本は遺伝子組み換え作物は栽培されておらず、被害は小麦などごく一部に限られる。しかし、「飼料用などに輸入された作物に種子が混入して持ち込まれれば、日本でも深刻な被害が出る恐れがある」と佐合教授は説明する。技術に頼って効率を追求する農業は曲がり角に来ているのかもしれない。

(科学技術部 青木慎一)