田坂広志 「風の便り」 特選 第59便(2012年10月5日)

今日は私の好きな田坂広志氏の一文を紹介します。

出力は入力したものに見合うということ、改めて考えさせられました。

パリで画家が育つ理由

 遠い昔、ある著名な画家に聞いたことがあります。

  なぜ、パリでは、
  あれほど多くの優れた画家が育つのですか。

 この問いを発しながら、私が予想していたのは、
 次のような答えでした。

  パリには、
  優れた美術学校がたくさんあるからだよ。

 しかし、その画家から返ってきた答えは、
 私の予想外のものでした。

  パリには、
  本物の絵がたくさんあるからだよ。

 その画家は、静かに、そう答えたのです。

 ある「高み」にまで達したものを、
 毎日のように、見る。

 そして、知らず知らずに、
 その「高み」を、自分自身の目標に重ねあわせていく。

 その無意識の営みこそが、
 一流のプロフェッショナルが育つための条件なのでしょう。

 そのことを考えるとき、
 一つの問いが、心に浮かびます。

  我々は、毎日、「本物の絵」を見ているだろうか。

 その問いが、心に浮かぶのです。


 2002年2月28日
 田坂広志